円安は、どの産業のコストを押し上げる?
輸入品の値段は、2020年からどれだけ上がり、そのうち為替(円安)の分はどれくらいか。そして、輸入品をたくさん使う産業はどこか。日本銀行の輸入物価指数(2026年8月分まで)と、2020年の産業連関表から見ます。
為替の先行きの予想や、投資・経営判断に使える情報ではありません。数値は公的統計から筆者が集計したもので、「試算」は前提つきの目安です。
1. 輸入品の値段と、為替の分(2020年平均=100)
輸入物価指数には、円に直した値段(円ベース)と、取引に使った通貨のままの値段(契約通貨ベース)があります。両者の比(円ベース÷契約通貨ベース)が、値段の動きのうち為替による部分の目安です。
読み取り(2026年8月): 円ベースの輸入物価は193.7(2020年の約1.9倍)、契約通貨ベースは142.0です。為替の分を表す比は136.4で、円ベースの上昇のうち、およそ47%が為替の動き、残りが原材料などの国際価格の動きによるものです(上昇率を対数で分けた目安)。
品目別(円ベース、2026年8月)
2. 輸入品をたくさん使う産業(2020年)
生産額のうち、輸入品の仕入れが占める割合です。国産の部品や材料に含まれている輸入品も、さかのぼって合計しています(波及込み)。全産業の平均は約11.3%で、割合が大きいのは石油・石炭製品、非鉄金属、電気・ガス・熱供給です。
棒の左側(はっきりした色)=直接の仕入れに含まれる輸入品、右側(淡い色)=国産の仕入れ品を通じた分(波及)。上位15部門。
37部門すべてを見る
3. 試算:輸入品が10%値上がりすると
輸入品の円建ての値段がすべて10%上がり、ほかの値段や取引の量は変わらず、値上がり分をそのまま次の買い手に転嫁した、という前提で計算すると、コストの上昇は平均で約1.1%、最も大きい石油・石炭製品で約5.1%です。円安が10%進んだときの影響の、おおまかな目安になります。
実際には、為替の動きがすべて輸入価格に表れるとは限らず、企業が値上げを我慢したり、仕入れ先を変えたりもするので、この試算より小さく出ることが多いと考えられます(仮説)。
方法と注意
- 輸入物価:日本銀行「企業物価指数(2020年基準)」の輸入物価指数(総平均、円ベース・契約通貨ベース)。月次で更新します。
- 輸入品の割合:総務省ほか「2020年産業連関表」(37部門)。品目ごとの「国内で使われる量のうち輸入品の割合」が、どの買い手でも同じと仮定しています(競争輸入型)。波及込みの割合は、輸入係数×投入係数に、国産品を通じた波及(レオンチェフ逆行列)を掛けて計算しています。
- 2020年の産業の構造が、その後も変わっていないと仮定しています。計算のスクリプトは
pipeline/import_content.py、pipeline/fx_import.pyです。